大雪の名残で道幅がせまい中をいつものスタジオへ。入り口に並ぶスタッフの靴のラインナップが雪の深さを物語っていました。
投稿者: 箕浦伸雄
帳尻はきっちり合いましたw。分割払いの日本海側と一括払いの太平洋側。雪の「大人買い」は気風よく一括払いだ!
ずっと雪のない十勝でしたが、とうとう帳尻を合わせる時が来ました。毎日降り続く日本海側と対照的に、太平洋側の十勝では冬はほとんど晴天。雪は一冬に数回まとめて「ドカッと」降ります。明日は爆弾低気圧が太平洋側を通過するまさしく「ドカッと日和」になりそうです。
雪化粧というにはあまりにも薄い、ほんのり薄化粧の朝でした。道内の豪雪地帯に暮らす人から見れば除雪の手間も要らずクルマの運転にも気を使わないことをうらやましがられそうですが、手放しで喜べない事情もあります。穀倉地帯の十勝では秋に植えた小麦は雪のふとんに包まれて冬を越します。むき出しのまま寒気にさらされ続けると深刻な影響が出かねません。農家さんだけじゃなくこの地に暮らす人は少なからず根雪が積もらないと気持ちの底が落ち着かないのです。
午前10時で−10°。北海道はここから1ヶ月が一年で一番寒い季節になります。1月の末まで一日を通して気温が+にならない「真冬日」が続来ます。日中の気温が0°になると「今日は暖かいね〜」という挨拶が交わされるのが十勝あるあるです。
立っているモデルさんの上半身を撮る時、モデルさんの胸元あたりの高さで撮影することが多いのですが、相手の身長に合わせて多少上下するもののほぼアイレベル(自分の目の高さ)で撮ります。今日の現場で仲間の梶子が同じ場面を脚立にのって撮っているのを見て、カメラマンの身長によって同じアングルでも苦労があることに思いがいたりました。190cmあるモデルさんなら私でも脚立のお世話になるしかないし、逆に190cmのカメラマンであれば中腰を余儀なくされます。一人で撮影している現場では意識することがない気付きでした。
撮影の仕事は今日が仕事始め。いつもと変わらない日常のスタートですが、やはり気合が入ります。
全国ニュースでは北海道も大雪が話題となっていますが、広い北海道、大雪の中心は日本海側で太平洋側はほとんど雪がありません。ここ十勝ではこの数年雪のないお正月が当たり前になっています。昨日今日と低気圧の影響で強風が吹き荒れて、日本海側では吹雪になっているようですが、十勝ではうっすら積もっていた雪が最初こそ地吹雪になったものの、すぐに雪が吹き飛んでむき出しになった畑から土が舞い上がって砂嵐のようになりました。タイトルの言葉は気象用語にはありませんが、今日の空模様を言い表すとしたらこれしかないと思います。大雪は困りますが純白の雪景色は恋しい新年です。
仕事始めに備えて一年のはじめにカメラのストラップを交換しました。フリーランスになってからずっと使い続けているDOMKE製のもので、厚いキャンバス地の中に滑り止めのゴムが織り込んであり、使い込むと色落ちしたりほつれたりしてダメージジーンズのようになります。このダメージの具合がその年の仕事ぶりを表していて、交換しながらこの一年のあれこれを思ったりするわけです。写真屋にとって一番大事な道具を支えているストラップはご神体を守るしめ縄のような存在で、交換した真新しいストラップで初仕事に臨むと「今年もいっちょやるか!」と気合が入ります。
gallery「海を見ていた」は2台の6✖️6判のフィルムカメラで撮影しています。1台は1950年頃のROLLEIFLEX、もう1台は同じ頃に作られたSolidaで、どちらも終戦直後のドイツで製造されたカメラです。ROLLEIFLEXのレンズの銘に入っているOptonとは、終戦によって東西に分断されたZeiss社の西ドイツ側に残った設備と技術者を使って造られた暫定のブランドです。Solidaの背面の製造国表示には連合国占領下のドイツを表すMade in Garmany US Zoneの刻印があります。戦争によって何もかも失なった技術者たちの、それでもカメラを造ることで得た希望と矜持を製品に託した気持ちが伝わってくるような気がします。コロナを戦時下に例える表現もありますが、普段出番のないスクエアフォーマットのカメラを使ってみたくなったのは、カメラの出自と今の自分の置かれた状況がシンクロしているからだと思います。今が戦中なのか戦後なのかはまだわかりませんが、技術者たちが願った戦いの後の平和な世界を写していこうと思います。